とある「ガチ勢」家族のお話
こんにちは
先日、『天皇杯、皇后杯』というバスケットボールの大会を観戦をするため、休日を理由して家族で行って来ました。
子供2人がバスケットボールを習っていて、レベルの高い選手達のプレーを見せたいと思い、勉強になればいいなくらいの気持ちでチケットを購入した。
僕ら家族は特に応援しているチームはなく、出場チーム全てが「地元」ということもあり、「応援しに行く」、と言うよりも「観戦しに行く」、といったスタンスでだった。
AM11:00開場、PM0:00試合開始の大会スケジュール。
僕らの買ったチケットは「自由席」だったので、できるなら良い場所で観戦したいと思いAM10:20くらいに開場を待つ列に加わった。僕達の前には、すでに20人ほどの人が並んでいましたが、【これくらいの人数だったら会場のキャパを考えて、まあまあ良い場所に座れそうだな】という確信が僕にはあった。
しばらくして、列が進み始め、時刻は開場時刻であるAM11:00を少し回ったところ。
建物の入場口で左右に1人ずつチケットを確認するスタッフさんがいたので、僕は入場していく人達の流れを止めないことを最優先に考え、入場口中央を歩きながら右側か左側かを見極め、烈火の如く素早いサイドステップで右側のスタッフさんにチケットを確認してもらっていざ入場。
ロビーを少し歩くと、正面右側に2Fへ登る階段が見えたので、いつもより1.7倍ほどの速度で歩き、顔は“無表情”をキープ。周りの人には【私はそんなに急いでませんよ】アピールを忘れずに階段を早足で駆け上がり、自由席の中でこの辺りが一番観戦しやすいであろう席に目星をつけると、さっきまでの1.7倍からサングラスをかけてスーツを身にまとったハンターから逃げるかのようなスピードで狙った席まで走って行った!
先程までの【急いでませんよアピール】をしている僕はその場に居ない、ただ…がむしゃらに自由席の中で1番良いであろう席を取って、嫁、子供に褒められたい。『お父さん、よくこんな良い席取れたね!すごく見やすいよ!』
ただ…ただその言葉が聞きたいが為に、僕は僕を捨て、ひとりイス取りゲームという新しい遊びを開拓してしまった喜びを胸に、背負っていた重圧と一緒にバッグを席に置いた…。そう…
いわゆる…
ジャパニーズ セイ BASHOTORI。
ほどなくして我が家が揃い、試合観戦が始まった。僕はソワソワして試合に集中できない。良い席を取ったが皆は褒めてくれない⁈
なぜか⁈
僕は妥協していた…、僕の中では2番目に良いと思われる席に座ることにしたからだ。
なぜか⁈
1番はもうどっかの家族が座ってたから…。
僕なりに頑張った結果なんだ!
僕が確保した席まで我が家をエスコートして、「ここに座ろう!」と言った瞬間、『アレっ?そっちの方が見やすくない?』的な顔を、嫁がしたのを僕は見逃さなかった。きっと僕じゃなかったら見逃しちゃうレベルの微かな変化だ。しかし1番であろう席にはどっかの家族が座っている。そう、ここは自由席なのだ。要は早いもの勝ちなのだ!
入場口から階段を登るまでのスカした自分を殴りつけてやりたい。きっとその時間で勝負は決まっていたのだろう。
会場を後にするまで、僕は褒められる事は無かった…。
ファイト!闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト!冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
作詞作曲:中島みゆき
僕達の1番の席に座っていたどっかの家族は、最終試合が始まる前におもむろに立ち上がり上着を脱ぎ始めた、そして姿を現したのは最終試合を行うチームのオフィシャルTシャツだった!手にはメガホン、そして試合が始まるや否や、腹式呼吸をベースに作り込まれた腹から出すいい声で応援を始めた。
「ヤベェ!ガチ勢だ!」
ちょっと待ってくれ、いままでそんな素振りを微塵も見せなかったではないか。大人しく座って微笑みを振りまいていたではないか。どこにでもいる「いい家族」と僕は思い込んでいた。
2度も僕はしてやられていた。
席の確保。
そして
前フリのないトランスフォーム。
今回の試合観戦でバスケット的な収穫は僕には無かったが、人生において非常に大切なことを身をもって教えていただいた。今後の人生に活かしていきたいと思う。
それは
自由席は1時間前に並べ
である。